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TOPに聴く

【TOPに聴くVol.3/後編】やりたいこと・やれることが結実して生まれた、
喜ばれる装置
-株式会社データ・テック 田野社長-

株式会社データ・テック

代表取締役社長
 田野 通保(たの みちやす)氏。

★前編は8月11日付けでアップ★

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                  <写真:第7回お客様交流会>

求められているのは、事故を減らす装置!

データ・テックのジャイロ技術は様々な企業で重宝され、あるメーカーのカーナビの基本センサとして採用されるなど、取り引き先からも信頼される存在になっていった。

ある時、雑談の際に車メーカーの社員さんがこんなことを口にした。 「車関係の保険って高いんだよね。場合によっては5年で100万円くらい。若いユーザーさんだと、これがネックになって車を買ってくれない。ライバルは、他社じゃなく保険料だったりして」

要は、トータルコストの話である。
購入する側にとっては車につぎこもうが、保険料として支払おうが、かかる総額に変わりはない。
なぜ若者の保険料は高いのか。

交通事故。
若年者ほど事故率は高く、従って保険料は高くなる。
また、物損であっても、事故を起こせば保険料は一気に上がってしまう。
車メーカーにとっては、車が売れないことの隠れた大きな要因なのである。
保険会社は好きで保険料を上げているのではない。
多額の保険金を支払うための、やむを得ない原資である。

事故は人生を狂わせる。被害者のみならず、加害者も。
その事故を、減らせないだろうか。
自分たちの技術を使って!

ジャイロ、GPSというデータ・テックのコア技術を使えば、安全運転を推進できる製品を生み出せるのではないか。
それができれば大きなビジネスにつながる。
何より、世の中の役に立てる!

初めは「事故やヒヤリハットの状況がわかるもの」をと考えた。セイフティレコーダ(以下、SR)の誕生である。しかし、当時エンドユーザーにヒアリングしてみて、わかったことがあった。
みんなが欲しているのは、起きてしまった事故を検証するしくみではない。事故が起きないようにする装置なのだ

雑談での一言が、田野の技術者魂に火をともした。
経営者としての「ワクワクする仕事を創り出したい」という気持ちを揺さぶったのである。



まずは、川上から攻め抜く!

当時、「事故防止」というコンセプトの装置は日本には皆無。
事故を記録するだけではなく、日常の運転を可視化し、自己点検できる装置。
安全運転とは何かを、数値として把握可能な装置。
従来にはなかった、事故を防ぐことを目的にした装置。
田野が、仲間2人と始めたデータ・テックの15年は、ココに結実する。
車に、街に、人に、未来にやさしい運転をトータルにサポートする「セイフティレコーダ」を、世に問うこととなった。

この製品、実際に使って欲しいのは、運輸業界や営業などで車を使う一般企業。
しかし、データ・テックの技術は、車メーカーなどには認知され始めていたものの、この業界では全く知られていない。

認めてもらうには、ダイレクトにぶつかっていくのではなく戦略が必要であった。
つまり、川上、すなわち車メーカーや保険会社から攻めていく。
ようやく、「安全」に対する認識が高まりだしていた。
これら巨大企業にも、ニーズは必ずある。
マッチした製品さえ出来れば、必ず使ってくれる。
それは即ち実績になるし、宣伝効果は抜群であるハズ!

再び、プレゼンテーションの日々が始まった。
自社製品を開発し売るためには、労力も時間もコストもかかる。
一方で地道な下請け業務に従事しながら、週の半分は開発と売り込みに費やした。

反応は悪くない。 仮説は、確信へと変わっていく。
が、大企業の多くは保守的であり、スピード感に欠ける。
他社の動向を気にして、一番先に手を挙げることを躊躇(ちゅうちょ)する。
担当者に評価され、「やりましょう」と言ってもらえても、正式の決定までには、しびれを切らすほど長い時間を必要とした。

結局、一番最初に採用してくれたのは、損保最大手の東京海上日動火災保険株式会社(当時、東京海上火災株式会社)。
事故削減のため、同社は「自動車事故削減のためのコンサルティング・サービス」を融合させた法人向けの保険を開発しているが、そのツールとしてSRを採用するなど、データ・テックのコンセプトに真っ先に賛同してくれたのである。
★同社の自動車事故削減に向けた取り組みを支援する自動車保険
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/csr/customer/service/car_life.html

続いて、自動車リースの大手、オリックス自動車株式会社(当時、オリックス・オート・リース株式会社)にも採用され、独自の運転診断サービスに組み込まれ、差別化力のある重要なコンテンツとなっている。
念願であった、「セイフティレコーダ」というオリジナルネームのまま紹介されているのも、うれしいことである。
★同社の運転診断サービス
http://www.orix.co.jp/auto/hojin/jigyou/autolease/option/risk/alive.htm

田野たちの、「川上から攻める」という戦略は見事に功を奏し、最も使って欲しかった運輸業界にも知られる技術・製品となっていったのである。


物流の主役、ドライバーの誇りは取り戻せるか?


私たちの社会は、全てモノの移送の上に成り立っている。
物流のしくみなくして、生活もビジネスも立ちゆかない。

移送の中核を担うのはトラックである。
鉄道、飛行機、船舶…、どれも重要な役割を担うとは言え、最初と最後はトラック移送に委ねるしかない。
この重責を背負うのは、個々のドライバー。彼らこそが物流の主役であり、拠り所なのだ。
だが、彼らのステータスは、その役割の重要性と相反して「低い」と言わざるを得ない。
対価のことだけではない。残念なことだが、職業として軽んじられている傾向がある。
だからこそ、運輸業務に携わる全ての企業の関係者、全国のトラック協会など各団体にとって、ドライバーの地位を向上させることは「悲願」と言ってもいい。

田野をはじめとするデータ・テックは、自社のオリジナル製品SRを通じて、運輸業界と密接にかかわってきた。
彼らが一様に口にする、「ドライバーの頑張りに報いたい」。
このことは、いつしかデータ・テックにとっての命題となる。
安全運転が数値化され、可視化される装置。
SRのコンセプトは、より明確になっていった。

努力したことが点数となって現れる。
頑張ったことがほめられ、表彰され、給与にも反映、結果家族にも喜ばれる。
導入当初こそ、ドライバーは「運行状況をチェックされること」に抵抗を示すが、「叱られるためではなく、ほめられるための記録なのだ」ということがわかり始めると、モチベーションは途端にヒートアップ。

前向きなドライバーが増えると、事業所や会社の空気が変わる。
管理職やTOPの意識も変わる。
事故が激減し、燃費向上にもつながる。
組織あげての取り組みに発展し、ほめること自体がしくみ化されていく。
もっと頑張りたい。より安全な運転を習得しよう!
ドライバーとしてのプロ意識は、職業への誇りへとつながっていった。

これらは、まぎれも無い事実である。
だが、田野はここまでのストーリーを描き切っていたわけではない。
運輸業界に貢献したい、ドライバーの味方になりたい。
みんなの夢を託した製品ではあったが、こんな好循環を生むとは!

SRは、いつのまにか一人歩きする製品になっていた。
そういう製品に育ててくれたのも、それを教えてくれたのも、みんな顧客であった。



コミュニケーションの場で知る、うれしい報告


田野は、顧客と話をするのが大好きである。
いろいろな情報を得ることができるし、そこには開発の種が無尽蔵に埋もれている。
会話の最中にアイデアが浮かぶことも、しばしば。
<そんな田野であったから、顧客との交流には力を入れている。

2003年には、お客様向けの情報誌として「SR NEWS」を創刊。
SRを導入してくださっている企業や事業所を取材させていただくなど、事例紹介を中心に、既にvol.40を数える(2008.7現在)。
また、2005年以来、「お客様交流会」を開催。
SRを媒介に、顧客同士がつながっていけるコミュニケーションの場を提供している。

SRがどのように利用され、効果を上げているのか。問題点、改善点はどこにあるのか。
つぶさに知るところとなるのだが、そこからは驚くような事実が浮かび上がってきた。

ある日の交流会。物流会社A社の社長が「ありがとう!」と言いながら田野に近寄り、握手を求めてきた。
社員であるドライバーの奥さんから電話があったのだ、と話し始めた。
「ウチのお父さんが安全運転診断で100点を取り、その表彰状を持って帰ってきました。子どもにもものすごく自慢して、この会社に入ったことを誇りにしていると言っています。私もうれしくてたまらず、思わず電話してしまいました。ありがとうございます!」

また、ある展示会での出来事。
中学生くらいの少年がデータ・テックのブースを訪ねてきて、こんなことを言うのである。
「お父さんはトラックの運転手をしています。僕はそんなお父さんが大好きで、とても誇りに思っています。SRのことをいつも話してくれるので、一度見てみたいと思っていました。そしたら、今日、学校行事で見学に来くることになり、念願がかないました!」

何とうれしい話ではないか。たまらなくなるのは、田野やデータ・テックの社員の方だ。
製品を購入してくださった上に、「ありがとうと」言ってもらえるとは!
思いがけない喜びの報告は、日常茶飯事と化している。



小さくてもトータルなものを、考え抜いて実現させよう!,


だからこそ、田野は立ち止まっているわけにはいかない。
顧客に育ててもらっている現状で満足するわけにはいかない。
開発企業として、もっと役に立てる製品にブラッシュアップしていく責任がある。
更に、新しい製品も創り上げていかねばならい。
そしてそれは、顧客の想像を超えるものでなければならない、と考えている。

田野がいつも思い浮かべるのは、ライト兄弟の飛行機の話だ。
人間が空を飛べるなんて、誰も想像だにしていなかった頃、彼らは「できるはずだ」というところから出発し、知恵を絞り、一つひとつ具体化していった。

まずは頭を使ってみる。困難があったら、それを乗り越えていく原動力は知恵だ。
だから、口が酸っぱくなるほど繰り返し社員に言う。
「考えよう!」

「安全運転を推進する装置」のパイオニア企業として、これまでは何とか売れてきた。
だが、安全と環境が叫ばれる今日、それは諸刃の刃だ。
大きなチャンスがあるだけに、競争は烈火するだろう。

まずは、車の買い替え時期と共に生き残っている会社でなければならない。
ニーズを教えてくださる顧客とのコミュニケーションを大事にし、考え抜いたことを技術に結実していく。
田野は、それこそが自分たちの務めであり、そこに活路は開けると信じている。

そして今日も、現実社会で顧客や社員とのコミュニケーションを大事にし、頭の中で自身との会話にいそしむ。
毎日が、仕事が、考えることが、楽しくてうれしくてしょうがない田野なのである。


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<写真:SRニュース(2008.8現在Vol.41発行)>

2008年08月18(月)